新卒で新規事業に配属されるのは、もっとキラキラしたものだと思っていた
「ITベンチャーに新卒入社し、新規事業に配属される」と聞くと、みなさんはどんなイメージを持つでしょうか?
楽しそう・成長できそう・キラキラしている、とポジティブなイメージが浮かぶことと思います。
しかし、今回インタビューした森さんは、新卒で新規事業に配属されて以来、苦しいことのほうが多かったと語ります。それはなぜなのか?話を聞いてみました。
※森さんはフィードフォースを卒業されました!
新卒入社して4年弱。苦しいことのほうが多かった
――新卒で新規事業に配属され、3年後にマネージャー就任。そう聞くと順風満帆のように思えます。
森 はい。確かにその字面だけみると順調に感じるかもしれませんが、実際はそうではなく、苦しいことのほうが多くありました。以下が、入社してから現在までのモチベーショングラフです。
――た、確かに落ち込んでる期間が長いですね。今日は、なぜ苦しい期間がつづいていたのか、話をお聞きしたいと思います。
思うような成果が出ず、同期の活躍と比較してしまう
――モチベーショングラフをみると、新卒1年目は高いモチベーションで働いていたようですね。
森 はい。新卒で新規事業のカスタマーサクセスに配属されて、やることすべてが新しいことばかりでワクワクしていました。
仕事をすればした分だけ自分のできることが増えていって、成長も実感できて楽しく働けていたと思います。
入社2年目にはマーケティングも任されるようになりました。セミナーを企画して、登壇して、参加者のリアクションを直に感じて次の企画に活かす……と、自分の考えたことをカタチにしていけるのが楽しかったですね。
――でも、2年目の途中からモチベーションが下がっているようです。
森 はい、そうなんです。そのころは、担当しているサービスがうまくいかない時期でした。
やってもやっても思うような成果が出ず、打開策も見つからない日々がつづいて、苦しいと感じていました。売上を伸ばすための施策をいくら試しても、手ごたえを感じられなかったんです。
森 そのころには、同期入社したメンバーの活躍も耳に入ってきていました。社内表彰される同期をみて、「なんで自分だけダメなんだ」と感じてしまうこともありました。
周囲の先輩やマネージャーからは、「同期と比べる必要はない」と言ってくれていたんですが……やっぱり気になっちゃんですよね。
ITベンチャーの新規事業はもっとキラキラしたものだと思っていた
森 当時の自分は、思考が止まってしまっていたというか、いろいろ考えすぎてしまっていたというか。悩んではいるものの前に進まない、停滞感をおぼえていました。
――停滞感、ですか。
森 はい。サービスの売上は伸びないし、自分の成長も止まってしまっているような、停滞感です。自分なりに必死に考えて実行したこともほとんど成果に結びつかない期間がつづいたので……。
いま思うと甘い考えだったとわかるんですけど、ITベンチャーに入社すれば担当サービスは成長していくものだと思っていたんですよね。就職活動中に聞いた先輩社員の話や、メディアで紹介されていた事例は、どれもグングン成長していく話ばかりだったので。
でも、世の中には思うように成長できないサービスもあるし、行った施策がうまくいかないこともある。むしろ、そっちのほうが数は多いはずです。そんな当たり前のことを、当時ようやく実感しました。
仕事の幅が広がり光明が見えるも、やはりうまくいかず。体調を崩して休職へ
――もう1度モチベーショングラフを見てみましょう。これを見ると、3年目に入るころに一度回復しているようです。
森 はい。3年目に入るころにチーム体制が変わって仕事の幅も増え、小さな成果も見え始めました。わたしの気持ちもそのときは少し上向いたのですが……。
その後、やはりサービスは思うように伸びず、打った施策の成果も出ませんでした。さらにメンバーの異動なども重なり、それ以前よりもチームが縮小していたのがこの時期です。
3年目になって業務範囲が広がり、事業の全体像を把握できていたころだったので、2年目のころよりも苦しさが増していました。全体が見える分、チームの成果がダイレクトに自分ごとに感じるというか。無力感とか絶望感を抱いていました。
元々は、「このサービスを世に広めるぞ!」と熱意を持って仕事をしていたはずなのに、無力感のせいかそんな気持ちも弱まってしまっていたんです。
そうしているうちに、心身のバランスが崩れてしまいました。ベッドから起き上がるのがつらくなったり、PCを開くのが苦しくなってしまったりと。
――それは……つらいですね。
森 そういう状況がつづいたので、当時のマネージャーと相談して休職することになりました。正直、休職することに抵抗はありましたが、マネージャーをはじめとした周囲のメンバーが後押ししてくれたんです。
チームメンバーや先輩社員は、休職中の業務を引き継いでくれたり、復職後も無理しないようにと気づかってくれました。少人数チームでひとりが急に抜けるのは大変だったと思うのですが、いやな顔ひとつせず対応してくださって、感謝しかありません。
復職後、マネージャーを任されるもプレッシャーには感じなかった
――休職を経て、なにか変わったんでしょうか?
森 休職期間中に仕事から離れたことで、自分との向き合い方が変わったというか、それまでよりも深刻にとらえすぎないようになりましたね。自分がいま悩んでいることって、世界規模でみればぜんぜん大したことないや、と気楽に考えられるようにもなりました。
そうして働いているうちに、また体制変更があってマネージャーに就くことになりました。
――えっ、復職して数か月でマネージャーになったんですか。その……プレッシャーにはならなかったんでしょうか?
森 初めてのマネージャー業務だったので不安はもちろんありましたが、プレッシャーはさほど感じませんでした。
できないことを考えすぎてもしょうがないというか。ぼくを含めた、いまいるチームメンバーでできることをコツコツやっていけばいい、という心境でしたね。
うまくいかなくて当たり前と実感してから、ほんとうの意味で挑戦できる
――先ほど話に出てきた、「停滞感」「無力感」とはまったく異なる心境のように思えます。なぜ心境がそんなに変わったんでしょうか?
森 うまくいかなくて当たり前、という感覚をもてたからだと思います。失敗するのがふつう、というか。新しいことに挑戦しているんだから、うまくいかないことのほうが多くて当たり前なんですよね。
無力感に悩んでいたころは、その当たり前のことがわかっていませんでした。成果が出ないことを自分のせいだと感じてつらくなってしまったりとか。
森 休職して仕事から離れて、冷静に自分を見つめなおした今では、「うまくいかなくて当たり前」が心から実感できています。うまくいかなくて当たり前だからこそ、失敗をおそれずどんどん挑戦できると思います。
本気で取り組むことと気楽に考えることは共存できる
――最後に、この記事を読んでいる新卒学生や若手社員にメッセージをおねがいします。
森 ITベンチャー企業の社員インタビュー記事を読んだら、「売上が伸びなくて苦しかった」という話がつづいて、なんだこれはと思っているかもしれません。でも、学生時代のぼくだったら、うまくいかなかった話こそ気になるな、と思ってお話ししました。
読者へ最後にメッセージをお伝えするとしたら、「挑戦した結果の苦しさは悪くないこと」と「"本気で取り組む"と"気楽に考える"は共存できること」です。これは読者にというよりは過去の自分に伝えたいことかもしれませんが。
――挑戦した結果の苦しさは悪くない……どういうことでしょうか?
森 今日、ぼくはずっと苦しかった話をしてきましたが、なぜ苦しかったかというと本気で取り組んできたからだと思うんですよね。適当にやっていれば、苦しさもないと思うので。
無力感をおぼえた話も、自分の実力以上の挑戦をさせてもらっていたからこそです。そういう意味ではしあわせなことですよね。なので、苦しかったり無力と感じたりは、必ずしも悪いことばかりではないと思うんです。
――なるほど。
森 そして、成功させたいと本気で挑戦したうえで、「うまくいかなくて当たり前」と気楽に考えることは共存可能だと思うんです。うまくいかなくて当たり前だからこそ挑戦できるというか。
ベンチャー企業を志向する方は、多かれ少なかれ挑戦する意欲があると思います。なかにはぼくのように、挑戦した結果うまくいかず、苦しむこともあるかもしれません。そんな方がこの記事を読んで、少しでも前向きになってくれたらとてもうれしいです。
――森さんのメッセージ、きっと届くと思います。お話ありがとうございました。