SaaSの損益分岐点をこえるまでに取り組んだ、ふつうだけどふつうじゃないこと
フィードフォースnote編集部がいま話を聞きたい人の話を聞くインタビュー企画!今回は、「dfplus.io」売上伸長の立役者である谷垣進也さんと松下大紀さんに話を聞きました。
※谷垣さんはフィードフォースを卒業されました!
2016年12月にローンチし、いまではフィードフォースの主力サービスの1つに成長した dfplus.io。しかし、ローンチ後しばらくは思うように売上が伸びなかったそう。dfplus.io が損益分岐点をこえるまでにどんな取り組みをしてきたのか、その秘密に迫ります!
サービスローンチ直後から売上大幅未達…立て直すために社内スカウト
ー今日は、dfplus.io がどのように売上を伸ばしてきたかをお聞きできればと思います。サービスローンチ直後の売上はどうだったんですか?
谷垣 2016年12月のローンチ後、思うように契約件数・売上ともに伸びず、半年間の売上計画では大幅未達でした。
当時は、「SaaSなんだから営業がいなくても自動的に売れていくのが理想」という考えで専任の営業をつけていなかったのですが、これが良くなかった。
ローンチ当時、世の中的にまだデータフィードマネジメントが一般的ではなく、データフィードをどう活用すればいいか分かっていない企業が多い中、サポートもせずに「自由にさわってみて、よければ買ってください」では売れるわけないんですよね。このままじゃダメだとすぐに気づいて、当時別チームで営業をしていた松下さんを社内スカウトしました。
ー松下さんは社内スカウトでチーム入りしたんですね!
谷垣 そうなんです。データフィードの知識があって、営業として信頼できて、一緒に仕事をしやすい人…と社内を見回してみたら松下さんがいいな、と。
松下 そんな風に思って声をかけてくれたんですね、嬉しいけどほめられると照れますね。
谷垣 照れてください笑。もうあまり覚えてないけれど、中華料理屋でしたっけ?松下さんをご飯に連れていって、「興味があれば dfplus.io にこない?」という話をした記憶があります。
松下 何となくですが、誘われたときのことを覚えています。話を聞いて、dfplus.io を自分の手で伸ばしたい、という気持ちになりました。
初めて売上達成したときは、ぬるめのお風呂につかったような感覚だった
谷垣 松下さんの加入後、インサイドセールス・マーケティングの専任者がそれぞれ入ってくれて、ビジネスサイドの体制が整いました。
ー体制が整ったことで売上は伸びたんですか?
谷垣 思ったより時間はかかりましたが、結果として売上を伸ばすことができました。初めて売上目標を達成することができたのが2019年8月なので、サービスローンチから3年半ですか。けっこうかかりましたね…。
松下 初めて達成したときのことはよく覚えています。「やったー!」というよりは、「やっとか…」という安堵感が強かったですね。あと、「これでがっきーさんが会社からほめられる」と思って嬉しくなりました。
谷垣 謎の上から目線笑。
でも安堵感というのはよく分かります。ラッキーパンチの達成ではなくて、それまでの積み重ねから生まれた再現性のある達成だという自信があったので、「これでちょっと安心できる」と思いましたね。ぬるめのお風呂につかったようなじわぁっとした感覚になりました。自分でも何を言ってるかよくわかりませんが。
「ふつうのこと」を積み重ねることで結果がついてきた
ー初の目標達成から1年経った現在も成長角度を保っていて、まさに再現性を証明していますね。ズバリ勝因はなんですか?
谷垣 特別なことは何もやってないんです。なので勝因というと難しいのですが、あえていうなら、ふつうのことをふつうに積み重ねてきたことが勝因だと思います。
ーふつうのこと、ですか?
谷垣 はい。みんなが知っているような、一般的にやったほうがいいと言われていることに取り組んできました。
例えば、「マーケティング・インサイドセールス・フィールドセールスと分業して職種ごとのKPIを定める」「商談フェーズを定義して、フェーズを進めるための打ち手を考える」「日々の活動内容を営業管理ツール(Salesforce)に記録する」「週次・月次のふりかえりサイクルを設けてPDCAを回す」などです。
ーわたしが言うのもなんですが、どこかで聞いたことがあるような、ほんとうに「ふつうのこと」ですね。
谷垣 はい。これらはSaaS界隈の人ならみんな読んでいる『ザ・モデル』にも紹介されている基本的なこと、言ってしまえばふつうのことだと思います。そういったふつうのことをプロセスごとに磨き上げていきました。
松下 基本を積み重ねることの大事さは、がっきーさんに教わりました。Salesforceへの入力をキッチリやるようになりましたし。
谷垣 配属当初はかなりしつこく言いましたよね笑。「Salesforceちゃんと入れて―」とか。
そういう基本的なことの積み重ねが大事だと思うんです。
例えば「マーケ・インサイド・フィールドの分業」と一言でいっても、その中には「職種ごとの適切なKPI設定を考え抜く」「KPI達成のためのプロセスを整理してブラックボックスを作らない」「プロセスごとに指標を設けて異変があれば気づけるようにする」「すべてのプロセスとKPIが矛盾なくチームの目標に向かうように設計する」などの工夫があるわけで。それら1つ1つをサボらずやってきたつもりです。
インサイドセールスは単なるアポ取りじゃなく夢を語る役割
ー「ふつうのこと」を磨き上げたことが、成長につながったんですね。
「ふつうのこと」のクオリティを高めるためにはどんなことをしたのですか?
谷垣 前職でインサイドセールスの立ち上げ支援をしていたこともあって、インサイドセールスのワークのさせ方は工夫して取り組んだつもりです。
例えば、インサイドセールスをチーム内でどう位置づけるか?はチームづくりで重要なポイントになりえます。
ーインサイドセールスの位置づけ…というと、どういうことですか?
谷垣 dfplus.ioチームでは、インサイドセールスをマーケティング側フィールドセールス側どちらにもつけずに独立させています。マーケティング・インサイドセールス・フィールドセールスの間に上下関係を生まずに対等な役割を持たせるのが重要だと思っているからです。
松下 なるほど。
谷垣 ありがちなのは、インサイドセールスをマーケティングまたはフィールドセールスのアシスタント的な位置に置いてしまうこと。そうなると、インサイドセールスの役割が単なるアポ取り業になってしまって、インサイドに就くメンバーが仕事を楽しめないと思ったんです。
インサイドセールスは単なるアポ取りではなく、見込み顧客に対してサービス導入で実現できることを説明する…いわば夢を語って商談を育て発掘していくクリエイティブな仕事だと認識してほしかった。なので、インサイドセールスは独立した機能として置くことにしています。
健全なケンカを生み出すためのコミュニケーションの場を設計
ー各職種の立場を対等にしたんですね。でもそうして分業することで、職種間の連携が取りづらくなると聞いたことがあります。そうならなかったのですか?
谷垣 確かにそんな話を聞いたことありますね。それぞれで目標を持つから、職種どうしで仲が悪くなるとか。松下さん、そう感じたことありました?
松下 まったくないですね。むしろうまく連携できてると思います。
谷垣 前提として、健全なケンカというか、コミュニケーションはあってしかるべきだと思っています。「リードの質が悪くて商談が作れない」とか、「商談作成の段階でもっとヒアリングしてほしい」とか。そういったコミュニケーションから改善が生まれるので。
そういう健全なコミュニケーションを意図的に生み出すために、職種間でフィードバックを返す定例の場をセッティングしました。
例えば、インサイドセールスがマーケティングにフィードバックする「インサイドマーケ定例」というものがあります。そこでは、マーケティングが獲得したリードの質についてインサイドセールスからフィードバックしたり、逆にインサイドでのトーク内容についてマーケティング側からアドバイスしています。
松下 自分はけっこう意識的に、他職種へのアドバイスや協力をしていたと思います。フィールドセールスとしての個人目標とは関係なくマーケティングのアイデアをいっしょに考えたり、インサイドセールスに顧客の生の声をフィードバックしたりとか。
谷垣 松下さんのそういう動きはすごい助かってました。安心感がある。
そういった健全なコミュニケーションを生み出せていたので、職種間でギクシャクせずにすんでいると思います。
メンバーを信頼しているからこそ、緻密な業務設計が機能する
ー商談フェーズを管理したり職種間のコミュニケーションの場を設計したりと、かなりキッチリ業務設計しているように感じました。
松下 がっきーさんは社内でいちばん細かく業務設計する人だと思います笑。
谷垣 心配性な性格で、そうしておかないと不安なんですよ。困っているメンバーを支援したくても原因特定までに時間がかかってしまうのが嫌だというか。
例えばインサイドセールスの商談数が足りないとなったときに、架け先が足りてないのか・コネクト率が低いのか・コネクトからの商談化率が低いのか…どこに課題があるかで打ち手が全然変わってきます。
業務設計ができてないと、どこに課題があるか分からなくて気持ち悪いんです。
松下 そういった緻密な業務設計のやり方は、がっきーさんと働いたことで身につきました。フィールドセールスでいうと、商談時にセールスが感じた温度感も中間指標にしてましたよね。
谷垣 はい。定量的な指標だけじゃなくて、定性的かつ主観的な中間指標も置いていました。「担当者の手ごたえとして、良い商談にできたかどうか」とかですね。
ー定性的な指標もあるとは意外です。でも定性的な指標だと、メンバーの主観頼りになってしまいませんか?
谷垣 最終的にはメンバーの主観に頼ることになりますが、それでいいと思っています。業務ぜんぶを定量的な指標で割り切れるものではありませんし。中間指標を置くことで、「どこまでうまくいっていて、どこからうまくいってないのか」を切り分けやすくなります。
ただ、定性的な中間指標をうまく機能させるには、メンバーみんなが「ウソをつかない」と信頼できているからという前提があります。担当者の主観で判断するので、ウソをつこうと思えばつけるわけです。
でもそこは、メンバーを信頼できているので心配していません。ヒトとして、その職種のプロフェッショナルとして、そういうことはしないと信じてる。
チームで少しずつ業務をカイゼンすることで売上を伸ばすことができたのも、細かく設計した業務1つ1つの意味を各メンバーが理解し、プロフェッショナルとして責任を持って取り組んでくれたからです。
松下 いい話だなぁ。
ーいい話ですね。「ふつうのこと」をきっちり実行することは、ぜんぜん「ふつうのこと」じゃないのかもしれませんね。
若手から下剋上されるのを楽しみにしている
ー最後に、がっきーさんの仕事のモチベーションってなんですか?
谷垣 最近、若者が育つのが楽しいんですよ。松下さんという若手エース社員が成長するのを間近で見ることもできましたし。それが楽しみでありやりがいに感じています。
松下 がっきーさんから教わったことはすごくたくさんあって、がっきーさんのもとで働けて良かったと思っています。
でも今は、追いつきたい・追い抜きたい存在でもあります。負けたくないライバルというか。
谷垣 早く追い抜いて下剋上してください笑。楽しみにしています。松下さんに谷垣のコピーになってほしいと思ったことはなくて、わたしが教えたこと+松下さんならではの強みを生かして成長してもらいたいな、と思います。そうすればすぐ追い抜けますよ。
松下 がんばります!
ー素敵な師弟関係でありライバル関係ですね。お二人とも、お話ありがとうございました!
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